モスバーガーが苦戦中
一昔前では、マクドナルドは大衆食で、モスバーガーは高級食というイメージでした。
手軽に食べることができ、注文してから食べるまでが短時間で済むマクドナルドと違い、モスバーガーは全く異なる路線で勝負していました。
素材にこだわり、店舗で注文を受けてから手作りをするという手間がかかっている分、手軽には食べることができないプレミアム感がモスバーガーにはありました。
それが消費者にも受け入れられて、モスバーガーはかなりの黒字を出していました。
それが、一転して赤字に転落しているのです。
確かに店舗で食中毒が発生したりと、お店としての管理力が足りなかった面もあったのでしょうが、赤字額を見るとそれだけとは到底思えません。
それまで築いてきたモスバーガーの高級店というイメージまで、損なわれてしまったようで、客足が遠のいているのは間違いありません。
マクドナルドとの対比
モスバーガーが好調であった時に、ライバルであるマクドナルドは絶不調でした。
取り扱っている食材の賞味期限切れ問題や、不衛生な工場という問題が次々と発生し、どこの店舗でもかなり空席が目立っていました。
しかし、そんな状況からたった数年で過去最高益を出すほとまでにV字回復しています。
業界1位と2位ではありますが、モスバーガーの売り上げはマクドナルドに遠く及びません。
好調時代にもマクドナルドを抜くことができなかったのが、今の売り上げ不振につながっているのではないでしょうか?
特に問題がなかったので、既存の路線を続けてきたことは間違いではないですが、やはり新たなことへの挑戦も必要です。
一度危機感を味わったことで、マクドナルドは大きく成長したので、モスバーガーはここが正念場と言えるかもしれません。
モスバーガーのライバル
モスバーガーのライバルは、ハンバーガーを取り扱う同業者だけではありません。
駅前やショッピングモールなどを中心に出店するマクドナルドと違い、モスバーガーは住宅地や商店街などに数多く出店しています。
その出店場所が、新たなライバルを生みました。
住宅地にはコンビニエンスストアの出店が続いており、それがモスバーガーのライバルとなりました。
高級感がありちょっと値段が張るモスバーガーとコンビニの低価格商品は一見すると、全くバッティングしないように見えますが、これがバッティングしてしまったのです。
おりしもコンビニも各社それまでのジャンキーさから脱却しようと、食品の安全性や健康志向を売りにしていたので、もろにモスバーガーとイメージ戦略が重なってしまいました。
モスバーガーにとっては不運とも取れる事態ですが、最大のライバルであるマクドナルドが業績不振の最中に差を詰めることができなかったのは、最大のミスです。
黒船バーガーの登場
マクドナルドの業績不振に伴い、海外のハンバーガーチェーンが次々に日本に上陸してきます。
そのいずれもが、高級・健康的イメージを売りにしており、またまたモスバーガーのイメージと重なっています。
しかも、アメリカ本国での売り上げや人気も十二分に備えており、実績には疑いようがありません。
モスバーガーにとってはマイナスな影響しかない黒船バーガーの登場でしたが、マクドナルドには低価格路線をそれまでよりも売りにして差別化を図ることができました。
奇しくも、マクドナルドの業績不振によって登場した黒船バーガーが、マクドナルドの業績をよくし、モスバーガーの業績を悪化させるという、予想外の顛末につながりました。
黒船バーガーが、モスバーガーよりも更にプレミアムな高級感を出すことで、モスバーガーは中途半端な立ち位置になってしまいました。
同時期に既存のフレッシュネスバーガーやファーストキッチン、バーガーキングが自らの売りを前面に出した戦略が成功したことが、更なるモスバーガーの赤字へとつながっていきます。
今後のモスバーガー
遠のいた客足を取り戻そうと、産地にこだわった食品を使った限定商品の販売や、過去に人気のあった商品の復活、他業種とのコラボレーションなど、様々な施策を打ち出してきました。
しかし、いずれの施策も既に他の店舗では当たり前に行われているものばかりで、インパクトが欠けている感じは否めません。
そんな施策が大当たりすることはなく、一定の成果を収めても、過去のモスバーガーのイメージを取り戻すまでには至っていません、
マクドナルドが業績不振から脱し、過去最高益を出すには、自社の強みを生かした戦略を相当練ってきたことがわかります。
SNSを生かしたアピールと、これまでに一度も取り組んでいないサービスの展開などが次々に大当たりを続けています。
モスバーガーも、これまで築いてきたイメージを失うことなく、新たなことに挑戦していかないと、苦境はますます続くのは間違いありません。
消費者の声に耳を傾け、面白いと思える話題になる新たな施策を打ち出せるかが、今後のモスバーガーを左右する。